ACW2 News
看護師育休裁判 水野晴美さんを支援する会
2006年5月25日 みなと医療生協・協立総合病院にはたらく看護士が、
みなと医療生協を相手に裁判を起こし闘っています。
看護師である水野さんは、子供を出産後に産前産後休暇を取得し
その後、育児休業を取得しようとしたところ、婦長職を解任されました。
また、夜勤のある病棟に移動命令が出され、深夜勤務免除の請求をすると
今度は、自宅待機の休職命令を出しました。
労働組合の支援で、休職処分は解かれましたが、夜勤のある病棟勤務に
配置されたままです。
2007年10月17日 (水)午後1時15分から
名古屋地方裁判所 1103号法廷 証人尋問
地下鉄 名城線 市役所下車 (5)出口 西550メートル
地下鉄 鶴舞線 丸の内下車 (1)出口 北東350メートル
支援する会の入会は
連絡先 名古屋市中区金山1−9−17 金山スズキビル8F
金山総合法律事務所内
FAX 052-331-9060
お名前 ご住所、 電話番号、FAX、メール
年会費1000円
下記は、準備書面の要旨
原 告 水野春美
被 告 みなと医療生活協同組合
準 備 書 面(10)
2007年4月2日
名古屋地方裁判所 民事第1部イ係 御中
本準備書面は、原告の従来の主張の要旨を述べるものである。
第1 主張の骨子
被告は、使用者として、労働者、特に女性労働者に対して妊娠、出産、育児について配慮し支援する労働契約上の義務を負う。
しかしながら、被告は、このような労働契約上の義務に違反し、原告に対し産前休暇中に婦長職を解任し、正職員からパートへと雇用形態の変更を余儀なくさせ、三交代勤務ができるような状況にない原告を病棟に異動させるなどして、原告に対し精神的・身体的及び経済的損害を与えた。
第2 被告の労働契約上の義務
1 被告は、使用者として、女性労働者の妊娠・出産・育児等について配慮し支援する労働契約上の義務を負う。
2 育児休業法上の使用者の義務
被告は、使用者として、女性の妊娠や出産ばかりでなく、男女を問わず家庭責任を負う労働者の育児などについて尊重し支援する義務を負い、そのために労働者の労働条件を整備し、働きやすい環境を整える義務を負っている。
育児休業法では、労働者が育児休業を取得することは権利であると認め、それ故、労働者が休業を申し出、又は育児休業をしたことを理由として当該労働者を解雇することができないと定められた。その後、男女労働者に深夜業制限請求権が設けられ、解雇など不利益取扱いが禁止された。
3 被告は労働者に対して健康配慮義務を負う。
被告は、労働契約ないしこれに付随する義務として、労働者の健康状態を把握し、健康を損なわせないよう、時間外労働の制限、育児休業取得、勤務時間の短縮、深夜業の免除、子の看護休暇取得など労働条件に配慮すべき義務を負う。そして、使用者がこのような配慮ないし支援をしない結果、労働者の精神的身体的疲労が慢性化して健康を害した場合には、使用者には安全配慮義務違反があったと見るべきである。
第3 被告の義務違反
本件で、被告生協の義務違反として重要な問題は次のとおりである。
1 1996年7月1日、原告の婦長職を解任したこと
被告は、原告が産前休暇を取得している間の7月1日に、原告の合意もないまま、婦長職を解任した。原告は被告との間で解任前に婦長職解任につき合意したことはなく、いつ婦長職を解任されたか知らなかった。
被告が原告の婦長職を解任して原告に対し不利益取扱いをしたのは、労働省指針に反し、労働者が育児休業を取得することが労働者の基本的権利であることを明定した育児休業法の趣旨にも反する。また、原告が職場復帰した後、原職である婦長職に復帰させなかったのは育児休業法9条に反する。
2 1998年4月1日、正職員からパートへの雇用形態変更したこと
被告において原告が看護師を続けながら出産、育児をする支援態勢が全く整っていないため、上司から「休まれると困る」「こんな子供をかかえて私だったら、よう働かないなどと非難され、休暇も十分に取得できない状況だったことから原告は正職員から低賃金のパート職員へと雇用形態の変更を余儀なくされた。
3 内科外来から病棟への異動命令を巡る問題
(1)2001年9月22日、原告に対し内科外来から病棟へ異動命令を発令したこと
原告は2000年8月1日付けにて、パート勤務から常勤に変更し引き続き内科外来勤務となった。その際原告は上司に「子どももまだ4歳で夫の勤務形態ではとても育児を任せることができない状況です。当面、内科外来勤務にして欲しい」と述べ、希望どおり引き続き外来勤務となった。このように被告は原告の育児負担上、三交代勤務ができないことを十分認識していたにもかかわらず、突然、病棟勤務を発令した。
第1に、病棟への異動命令は原告に対する事前の意思確認や三交代勤務の可能性について確認をしないままで行われたこと。第2に、原告が労働組合の役員として先頭に立ち、原告にとっても重要な院内保育所の重要性を訴え、被告生協が行おうとしていた院内保育所の外部委託に反対したところ、千村総婦長に応接室に呼ばれ「かもめ問題から手を引くように」と言われていること、第3に、当時の人事異動の状況を見るに、外来勤務の看護師で病棟への異動命令を受けたは原告以外病棟への希望を自ら申し出た福島美紀看護師のみであること、第4に、当時300名以上いた女性看護師の中から、病棟勤務ができるような状況にないことを明確に述べていた原告をあえて病棟に異動する必要性は全くないことは明らかである。よって、病棟への異動命令は報復人事、不当労働行為であり、かつ業務上の必要性、合理性がないにもかかわらず行われた違法無効である。
(2)2001年10月23日付けのの原告の深夜業制限請求を無視し、同年11月28日、被告が原告に自宅待機を命令したこと
上記のとおり病棟への異動命令は無効であるが、解雇の危険性を察知したため、原告は異議を留めて異動命令に従った。原告は病棟への異動は同意していない。
原告は三交代勤務ができる状態ではなかったため2001年10月23日に深夜業制限請求書を提出したが、被告は請求書の日付けの違いを口実にこれを突き返した。原告は同年11月9日にも深夜業制限請求書を提出したが、被告は認めず、10月31日には、原告も三交代勤務に組み込んだ11月のシフト表を強行しようとしたため、原告はやむを得ず深夜、準夜勤務に従事したが、11月22日には心労が重なって体調不良となり欠勤した。小島総師長と林理事から「勤務表に決めたとおり夜勤もするように」との指示があったので、11月26日にも深夜勤務に入った。ところが、深夜勤務明けの11月27日午前10時頃、原告は突然自宅待機を命じられ、翌28日、「貴方様の『育児休業法にもとづく夜勤制限の請求』に対する当生協の対応について」と題する書面を渡された。
以上のとおり、被告は三交代勤務が不可能な原告に対して病棟への異動を命じて、原告に負担を生じさせた。さらに原告の深夜業制限請求を拒否し、自宅待機を命じ原告の仕事を取り上げ原告を解雇されるかもしれないという不安な状況に追い込んだ。
被告が原告の深夜業制限請求を拒否したこと自体、育児休業法を無視した違法な対応である。そればかりでなく、さらに被告生協が原告に対して自宅待機まで命じたことは、深夜業の制限を請求をしたことを理由として原告を不利益に取り扱うものであって、1999年(平成11年)4月の指針で違法とされた不利益取扱い、2001年(平成13年)11月16日に施行された「自宅待機を命ずること」など8つの態様を掲げた不利益取扱い禁止規定(甲6)をあえて無視するものであるから、違法な命令である。被告は、このような違法な命令により、原告の心身に負担を生じさせたのである。
(3)2002年4月1日、原告が職場復帰した際、被告は再度原告を病棟へ配属したこと
違法な自宅待機命令を取り下げさせ、原告は職場復帰することとなったが、被告は原告を病棟配属のままとし、原告にさらなるストレスを与えた。
これまで原告は11〜12年の病棟勤務を経験しているので、病棟勤務では他の看護師と勤務交代することが極めて困難であり、他の看護師に迷惑をかけることになることをよく知っている。三交代勤務のシフトの中で原告のみ他の看護師と異なる例外的扱いを受けるのはチーム看護を前提とする病棟勤務の中で他の看護師との関係でも軋轢を生じさせ、原告は他の看護師に負担をかけているという負い目を感じざるを得ない状況に置かれている。
被告は、女性労働者の妊娠・出産・育児等について配慮し支援する義務を負い、また、労働者の健康状態を把握し、健康を損なわないよう労働条件に配慮するべき安全配慮義務を負うにもかかわらず、これに違反し、三交代勤務ができるような状況にない原告を引き続き病棟へ配属して心身に負担を生じさせている。
第4 原告が受けた損害と本件請求
1 損害賠償請求
(1)経済的損害
原告は1984年に被告に看護師として再就職し、1991年4月主任に昇格し、1995年10月頃には病棟の婦長に昇格した。ところが1996年7月1日に婦長職を降格され、そのため合計8万9000円が減給された。
被告が前述した育児休業法に違反した対応をしなければ、原告は、出産し産後休暇、育児休業を取得して職場復帰した1997年(平成9年)7月からは婦長(看護師長)としての賃金を受領できる地位にあったのであるから、現在受領している賃金との差額、つまり少なく見積もって病棟婦長調整手当金27000円を除外しても役職手当40000円、調整給22000円の合計62000円について請求する権利を有する。
1997年(平成9年)7月から提訴時である2006年(平成18年)5月まで婦長(看護師長)職を外された状況が続いているのであるから、この8年11か月間で少なくとも合計663万4000円の賃金差額がある。
(2)精神的・身体的苦痛
原告は1997年7月に職場復帰したが、このときには看護婦長という役職を奪われ降格されたショックもあり精神的苦痛は大きかった。子どもの病気などもあったため、原告は職場に迷惑をかけているという強いストレスを感じるようになり、同年12月には追い詰められた状態になったが、上司からの助言はほとんどなく、病気の子どもを抱えた職員に対する支援制度もなかったので、原告は孤立感を味わっていた。内科外来のパート勤務になっても業務中に動悸、頭痛、過呼吸発作などの症状が出て精神的不安定な状態に陥った。1998年(平成10年)6月、原告はあらたまクリニックで「抑うつ状態」と診断され治療を受け、約1年後には軽快し、2000年(平成12年)8月1日、正職として内科外来に勤務した。
しかし、2001年(平成13年)9月22日、病棟への異動を命じられたことを契機に再び症状が悪化し、強いストレスから不眠もあり再び薬の内服が必要となった。同年11月28日の自宅待機命令によってさらに精神的ショックを受け、2002年(平成14年)3月31日に復職するまで4か月間の休職(自宅待機)中は精神的に不安定で泣くことが多かった。
2002年4月に職場復帰したが、従来の職場である外来勤務の希望は無視され6西病棟での勤務を余儀なくされた。職場での精神的苦痛を受けるようになった。
長女の就学年齢で深夜業制限請求が不可能になることが予想された2003年(平成15年)3月頃から、原告は再び強いストレスを感じるようになり、休業を余儀なくされた。原告は「抑うつ状態」で「約1ヶ月間の休養加療が必要と認める」旨の同年4月9日付け診断書を被告生協に提出し、その後、「抑うつ状態」で「当分の間、夜勤、変則勤務、長時間労働の制限を必要とする」旨の4月23日付け診断書(同16枚目)を被告生協に提出している。
しかし、その後も病棟での勤務を余儀なくされ、自分だけチームでの看護から除外されたという状態が継続しているため、ストレスが続いている。
このように原告が受けた精神的・身体的苦痛は筆舌に尽くしがたいが、敢えて金銭に換算すると金1000万円を下ることはない。
(3)したがって、原告は被告に対し、民法415条ないし709条に基づき、経済的損害663万4000円及び精神的・身体的損害1000万円の合計1663万4000円の内、金1000万円の支払いを求める。
2 病棟で勤務する義務がないことの確認
前述したように病棟への異動命令は、業務上の必要性・合理性がまったく存在しない違法無効なものであり、かつ労働組合活動に対する報復的人事、不利益扱いをであるから不当労働行為である。さらに現在でも三交代勤務ができるような身体的状況にない原告に対して、著しくストレスをかける病棟勤務を放置しているものである異動命令は無効である。
したがって、原告は被告に対して、原告が被告の運営する協立総合病院病棟で勤務する義務がないことの労働契約上の地位の確認を求める。
以上