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記事のトップ > ACW2からのお知らせ労働法制改悪に反対する「働く女性の全国センター」発足 声明文
私たち働く女性の環境を悪化させる動きが加速しています。
昨年末、次つぎに新しい政策やプラン・答申が出されました。経済財政諮問会議は、労働ビックバン・再チャレンジ政策を公表し、内閣府・女性の再チャレンジ支援策検討会議は、女性の再チャレンジプランを発表。また厚生労働省・労働政策審議会は、「今後の労働契約及び労働時間のあり方に関する報告」を答申しました。このうち労働時間法制(ホワイトカラー・エグゼンプション)については、反対の声が高まり今国会には提出しないとされましたが、次回提出の可能性が高く、油断できない状況です。
また厚労省・雇用機会均等分科会は、パート労働法改正案(短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律の一部を改正する法律案要綱)を提出しました。この改正案は、正社員との「均衡の確保」をしなければならない「パート労働者」の判断基準を、「職務同一」のほかに「期間の定めのない」労働者と「同視」できるパート労働者に限定しています。これは職場の実態を無視した極めて高いハードルであり、大多数のパート労働者はこのような基準を満たすことができません。これでは、パート労働者の差別を合法化し、固定化することになります。
こうした一連の法制化の動きは、働く人たちにほとんど知らされず、一方的に進められてきたといっても過言ではありません。働く人の人生を大きく左右する重要な法案が、なぜ、職場の声を聴くことなく、十分な実態調査もしないで次つぎと決められていくのでしょうか?
いま政府は、労働市場改革のプランで、労使双方が納得した「多様な働き方」や「仕事と生活のバランスの取れた働き方」を実現するとしています。「労使自治」の名のもと、労働時間の規制をなくして残業短縮を図るとし、さらには就業規則による労働契約の変更ができる労働契約法制を新設しようとしています。聞こえはよいのですが、この新しい法律が採択されれば、使用者が解雇や賃金の切り下げなど自由にできることになります。労働条件が女工哀史の時代まで逆行してしまうのではないでしょうか?
多くの職場では、正社員の仕事が、派遣やパートなど非正規社員の仕事に置きかえられていきました。その結果、働く人たちが労働条件の向上を求めて交渉することが困難になっただけでなく、労働基準法で保障されている有給休暇など労働者として当然の権利を行使したり、残業を断ったりすると、それだけで職場から排除されています。
また、政府の少子化対策推進とは裏腹に、妊娠を告げただけで退職勧奨を受けるなどの暴挙もいまだに後を絶ちません。差別やいじめ、セクシュアル・ハラスメント、長時間労働によって病気になり、休職や退職に追い込まれる人たちも急増しています。これが人間らしい働き方といえるでしょうか?
公共サービスの民営化にともない、保育士や看護師などケア労働の現場でも、急速に労働環境が悪化し、サービス内容の低下が生じるばかりか、安全の確保さえ困難となってきました。
こうした状況を反映して、労働局の相談窓口に寄せられた相談は90万件を超えています。民事上の個別労働紛争相談件数も18万件を超え、史上最多を更新しつづけています。紛争の多くは、使用者側が労働基準法を順守しないために起きたものです。
競争力の強化や利益追求のために、働く人たちの人権が平然と踏みにじられる由々しき事態が蔓延しつつあります。これに対して政府は、罰則を強化するのではなく、「規制改革」と称して、罰則規定がある労働基準法を骨抜きにする法制化をすすめようとしているのです。
女性に対しては、子育て支援、再チャレンジなど就労支援に力を入れるというポーズの裏で、児童扶養手当や生活保護の削減がなされています。意欲も能力もある女性たちが、長時間労働や細切れ労働で健康を害し、生活保護以下の生活を余儀なくされています。
将来を担う若いフリーターやニートの実態は、さらに深刻です。若者の間に、現代版の「日雇い」が急速に広がり、ホームレスも増加しています。やりきれないほどに、深刻で大変な格差が広がっているのです。
働く女性たちやフリーターの現状は、窒息寸前の状況まで追い詰められています。
私たちは、仕事も生活も愛も大切にしながら、悲鳴にも近い声を拾い集めて大きく紡ぎたいと考えます。どんな試練にもめげず、希望を持ち、働く人たちの尊厳を取り戻すための大事業を、一人ひとりが推進していくことを宣言します。
2007年1月20日
働く女性の全国センター 発足イベント 参加者一同